エリートな先輩の愛情を独り占め!?
「八谷先輩、起きてください!」
「んー……、あ、やば、俺寝てたのか」
「おはようございます……ご迷惑おかけしてすみません、本当にありがとうございました」
「もう大丈夫なのか?」
その問いかけに首を力強く縦に振ると、八谷先輩はくしゃっと笑って、私の頭をぽんと撫でた。
「じゃあそろそろ帰るわ。お前家ん中意外と綺麗なのなー」
「意外とってなんですか意外とって……」
「あ、そうだ、はいこれお土産」
八谷先輩はジャケットを羽織ってから鞄を持ったが、思い出したように床に置いてあった紙袋を私に押し付けた。
「大阪のお土産、たこせん。結構美味いらしいから食え」
「え、たった一日の出張なのに買ってきてくださったのですか。ありがとうございます……」
「社員には買ってないよ。お前だけにとりあえず買ってきた」
その言葉に、私はらしくなく固まってしまった。そしてもっとらしくないことに、私は勢いで馬鹿げた質問をしてしまった。ずっと気になっていた質問をしてしまった。

「八谷先輩は、どうしてこんなに私のことを可愛がってくれるんですか……?」
「え、だって可愛いから」

八谷先輩は間髪入れずに真っ直ぐな瞳でそう答えたので、私は困惑する暇もなかった。口を開けたまま、ひたすらにぽかーんとしてしまった。八谷先輩は、そんな私に更に言葉を続けた。

「それにお前面白いし」
「え……」

面白い……? 私、少なくとも八谷先輩にとってはつまらない人間じゃない? だから可愛いって思ってもらえてる? わからない。わからないけど今はその言葉が死ぬほど嬉しい。わけわからないくらい嬉しい。たった一言なのに、さっきまでの暗い気持ちが一気に吹き飛んでしまった。
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