エリートな先輩の愛情を独り占め!?
その、吐息混じりの苦しそうな声が妙に色っぽくて、一瞬どうにかなってしまいそうだった。

「普通にするつもりだったけど、正直今お前をどこに位置付けたらいいのか持て余してるよ」

……八谷先輩のアーモンド型の瞳に、間抜けな顔をした自分の顔が映っている。
彼氏がいるから、彼女がいるから、先輩だから……そんな理由をつけて今まで蓋をしていた気持ちを、無理やりこじ開けられてしまったら、私たちはどうなるの?

そんなの、怖くて怖くて考えられない。私はきっと今、越えてはならない壁の目の前にいる。

「……困らせてごめん」
何も言えなくなった私を見て、八谷先輩はゆっくり私から離れて家を出た。
静まり返った部屋には、まだ微かに八谷先輩の温度が残っているようで、私はぎゅっと強く瞳を閉じた。

そして、呪文のようになん度も唱えた。

八谷先輩には彼女がいる。
私には彼氏がいる。
八谷先輩は、仕事の先輩だ。


好きになるはずない、と。




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