エリートな先輩の愛情を独り占め!?

俺は鞄をソファの脇に置いてソファに腰を下ろし、ふう、と深いため息をついた。知佳はそんな俺を見て、心配そうにちょこんと隣に座った。

「仕事、忙しいの?」
「ああ、まあ……でも山場は乗り越えたよ」
「あんまり無理し過ぎないでね」
「ありがとな、知佳……」

俺はそっと知佳の頭を撫でて微笑んだが、胸の内では罪悪感でいっぱいだった。
知佳は、俺の大切な恋人だ。
院生時代から付き合っていたこと、初めて同棲した恋人ということもあり、歴代の恋人の中で一番情もある。

「今度の記念日、どこへ行こうか」
知佳が寂しげな表情をしていたので、俺は咄嗟に彼女のテンションが上がりそうな話題を持ちかけた。知佳はわかりやすくパッと顔を輝かせ、指おりながら候補を伝えた。
「えっとねー、折角運よく土日だから温泉旅行とか行きたいなー。ああでもひたすらグルメ旅もいいし、アクティブな旅行でもいい」
「分かった、知佳が喜びそうなプラン考えておくよ」
……最低だな、俺は。
彼女への罪悪感よりも先に、タマへの信頼を失ってしまったことを不安に思った。

知佳は、ヒステリックになりやすいところ以外は、院生時代と全く変わらなくて明るい。
彼女の感情の起伏が激しくなりだしたのは、明らかにお互いが社会人になってからの話だ。
「……ハチ君、この前はわがまま言い過ぎてごめんね。知佳もう少し我慢できるよう頑張るから……」
「俺こそ怒鳴ったりしてごめん、少し疲れてたみたいだ」
「ハチ君好きだよ……」
好きだよ、と言われて、罪悪感で胸がチクリと痛んだ。
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