エリートな先輩の愛情を独り占め!?
私は、最後のその表情だけが忘れられなくて、浮気されたことは事実なのに、今までのことを思い出して情がわいてしまった。
……竣介、私もごめんね。私は竣介に尽くそう尽くそうと頑張っていたけど、私は彼女としての評価を上げることに必死で、竣介自身とちゃんと向き合えていなかったよね。
ごめんね。
私は暫く恋を休むよ。
なんだか疲れちゃったし、今は誰とも向き合える気がしないから。
「タマちゃんにはもっといい人がいるよ。八谷先輩とか!」
「ぶっ、やめてよ」
由紀子がなんともタイムリーな名前を出したので、むせそうになった。
「え~、いいじゃん八谷先輩! めっちゃタマちゃんのこと可愛がってるし」
「本当に餌付けしてるだけだから……」
「八谷先輩が異動しちゃう前に、なにか進展あったらいいね」
「え、異動……?」
私が聞き返すと、由紀子は私以上に驚いた表情をした。
「えっ、本人から聞いてないの? 八谷先輩、3月から大阪本社に異動して商品開発部の主任になるんだよ! 栄転だって!」
「え……そうなの?」
八谷先輩が大阪に……?
その話、本格的に進んでいたんだ。
どうして八谷先輩は、私に直接教えてくれなかったのだろう。
もしかして昨日優しかった理由は、ここから離れちゃうから……?
「タマちゃん、大丈夫……?」
「う、うん、ビックリしたけど、でもやっと先輩の夢が叶うんだね」
『確かに寂しいけど、でもそれは八谷先輩の夢だもん。叶うといいな』
あの時はああ言ってたくせに、今私はものすごくショックを受けている。せっかく先輩の夢が叶ったのに、素直に喜べずにいる。
……その反面、どこかでホッとしてしまった。
先輩と距離をおけば、この気持ちをいつか落ち着くだろうと思ったから。
「私本当、ダメな後輩だったなあ……」
八谷先輩とランチを食べることも、もうすぐできなくなるんだ。
そのことが一番悲しいと先輩に伝えたら、どんな顔をするかな。