エリートな先輩の愛情を独り占め!?
それなのに、どうして私は今、泣いているの。
八谷先輩が大阪に行ってしまうという事実が急激にリアルに思えて、涙が止まらなくなってしまった。
八谷先輩と汗をかきながら激辛ラーメンを食べたことや、回転寿司で十五皿お寿司を食べてお腹がはち切れそうになったことや、女子高生に混じって流行りのパンケーキを食べにいったことが、頭の中で映像として鮮明に蘇って、八谷先輩と一緒に美味しいご飯を食べた日々がどんなに大切だったかを実感した。
ああ、私、こんなに八谷先輩と一緒にいることが幸せだったんだ。
知らなかった。気づくのが遅かったな。
もっと早くに出会いたかった。
もっと早くに気づきたかった。
でももう遅い。
大人の恋は、タイミングのよしあしがほとんどだから、それはもう、どうしようもないことだから。
「……関係をハッキリさせられないくせに、不安にさせてごめん。でももう、苦しませない。タマは、大切な後輩だよ」
「八谷先輩、私本当はっ」
「……ああ、でも、唯一心残りとして、殴ってやりたかったな。お前の元彼。こんないい子もう二度とないぞって……」
八谷先輩が、本当に悔しそうな顔で言うから、また涙がぽろっと落ちてしまった。零れた涙が冷め切ったコーヒーの中に混ざった。
八谷先輩が、細くて綺麗な指で、私の涙を優しく拭う。その瞬間、ストッパーもなにもかもが外れて、思いが溢れ出してしまった。
八谷先輩、私本当は、あなたが好きです。
でももう遅い。私が元の関係に戻ることを望んだのだ。