エリートな先輩の愛情を独り占め!?
泣き叫んだ声が路地に響いて、知佳さんはやっと正気に戻った。自分がさっきいかに酷い言葉を言ってしまったのかを、八谷先輩の冷たい瞳を見てやっと理解したようだった。
「ち、違うの、今のは……」
「……わかってるよ。怒りに任せて言っちゃっただけだろ。もうわかってるから、帰ろう」
「ハチ君、待ってよ、私本当にハチ君の夢は応援してるし、ハチ君のことが好きだから……」
「……怒ってないよ。もうとっくに、怒る気にもならなくなってるよ、……知佳には」
八谷先輩の冷たい言葉に、彼女は一気に顔面蒼白になっていた。
「タマ、また明日、職場でな」
でも、どんなに冷たく言い放っても、八谷先輩の手は彼女の腕を引いていたし、八谷先輩と彼女が帰る家は同じなのだ。
その事実が重くのしかかって、私はその場から動けなくなってしまった。
これでよかったのだ、と言い聞かせながら、八谷先輩と知佳さんの後ろ姿を、ただただ見つめていた。