エリートな先輩の愛情を独り占め!?
「タマは本当に先輩のことが大好きだったんだね」
「はは、ちょっと懐きすぎたかも」
誤魔化すようにそう言って笑うと、由紀子はじっと私の瞳を見つたまま無言になった。
その真っ直ぐな瞳を見たら、なんだかこの後に及んで濁している自分がバカらしくなって、私は目を手で覆った。
それから、絞り出すような声で呟いた。
「うん、好きだったな……すごく」
「そっか……、やっぱりそうだったんだね」
由紀子が優しく背中を撫でてくれたので、なんだか涙が出そうになってしまい、私はすぐに、誤魔化すように水を飲んだ。八谷先輩への想いも、水に溶かして流してしまいたいと思った。

「八谷君って、婚約したの？」
白衣に身を包んでから、衛生室に入ると、少しいつもより元気がなさそうな桜庭さんにそう問われた。
婚約、という言葉に驚き、私は反応に遅れてしまった。
「いえ、初耳です……そうなんですか」
目を丸くしたまま答えると、桜庭さんは、ふぅんと低い声を出した。
「だってもう同棲してたんでしょ？ 栄転もするし、どう考えてもいいタイミングじゃない」
「タイミング……」
確かに、そうかもしれない。
転勤を機に結婚を決める人は多いし、知佳さんは早く結婚して八谷先輩とずっと一緒にいたいような雰囲気だった。
あの時の八谷先輩の瞳は冷たかったけれど、きっとあの二人は今までなん度もなん度もあのような困難を乗り越えてきたのだろう。
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