エリートな先輩の愛情を独り占め!?
そこには、研修の時に八谷先輩とツーショットで撮った写真があった。まだスーツがしっくりしていない、あどけない私と、爽やかに笑う八谷先輩の笑顔がそこに写っている。
それを手に取り、なんとなく裏返すと、私はその場に崩れ落ちた。
「八谷せんぱいっ……」
裏側には、ベーグルのポイントシールが沢山貼ってあったのだ。
それは、いつか私が集めていると言った、ベーグルのポイントのシールだった。

『これ、よかったら食べてください。資料も汚さないし、腹持ちもよいですよ』
『タマ、俺あんまりベーグル好きじゃ……』
『腹が減ってはなんとやらですよ! あ、でもすみませんこのシールはもらいますね。三十枚集めるとジャッキーとコラボしてるお皿がもらえるんですよ〜』
『お前ジャッキーチェン好きなの?』
『違いますそっちじゃないです!!』

……先輩は、ベーグルが嫌いなのに。それなのに、私のためにベーグルを食べて、コツコツ集めてくれたんだろうか。
私を驚かせるために。喜ばせるために。
ベーグルを食べながら仕事をする八谷先輩の後ろ姿がありありと浮かんで、涙がとめどなく溢れた。

「……っきです……」
それから、声を押し殺して告白した。
今はもう遠くにいる八谷先輩のことを想って、写真を胸にぎゅっと抱きしめた。

八谷先輩、好きです。好きです。好きです。
あなたが、好きです。
もうどうしようもないくらい、やっぱり好きです。

ダメな後輩でごめんなさい。沢山迷惑かけてごめんなさい。傷つけてごめんなさい。気づくのが遅くてごめんなさい。

――大人になると、恋愛をタイミングのよしあしで諦めることが多くなった。でもそれは、タイミングを言い訳にして諦めたかっただけなのかもしれない。

私はなんて、臆病者だったのだろう。


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