エリートな先輩の愛情を独り占め!?
その日の業務を終えると、私はすぐ駅に向かって走った。
駅に向かう途中で、大阪行きの新幹線のチケットを予約した。手帳には、先輩とのツーショット写真を挟んだ。
自分でも信じられない行動力だと思った。まさかこんなパワーが、自分の中にあったなんて。

早く八谷先輩に会いたい、それだけの思いが今の自分を突き動かしているなんて。
「理乃!」
走って会社の最寄り駅付近に着いたその時、後ろから聞き覚えのある声に呼び止められた。
……そこには、スーツ姿の俊介がいた。
「竣介……なんでここに」
「理乃、やっぱり俺、お前じゃないと無理だよ」
「……その話はもう終わったはずだよ。竣介が終わらせたんだよ」
驚きを越えて、恐怖に近い感情を抱いた。
ちょうど帰宅ラッシュを終えた時間でひと気は少なく、私は少し身じろいだ。
竣介は少しやつれた顔をしていて、シャツにも皺がよっている。私が知っている竣介はそこにはいなかった。
「理乃、やり直そう。もう一度信じてもらえるまで、俺頑張るから」
「無理だよ、もう信じるもなにも、竣介はそういう対象じゃないもん……」
怯えながら首を横に振ると、俊介は一気に距離を詰めて私の肩を両手で掴んだ。
「なんでだよ……、もう好きな奴ができたのか?」
「……は、離して、痛いよ」
「否定しないのかよ……。もしかして、よく話してた八谷って奴か?」
「……だとしたらなんなの」
あまりに高圧的な態度にさすがにむっとなって言い返すと、今度は手首をぐっと掴まれた。
「なんだよ、お前も浮気してたんじゃないの、その八谷って奴と。だったらおあいこじゃん」
「は……?」
「ランチとか言いつつ、実は昼間から仲良くしてたんじゃないの? もしくは八谷に脅されて仕方なくとかさ……お前商品開発行きたがってたし」
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