ツケマお化けに恋して
「ねぇ美貴野あんた本当に明日行くの?」


「うん、行くよ」


明日は稔の結婚式なのだ。

そして宏海も同期なので招待状が来ているのである。


「木村、二股かけてたんだよ!?あんた悔しくないの?あんな男を祝ってやる必要ないじゃん!」


私達の事を知ってる宏海は稔の事を本当に怒っている。

半年前…稔に振られて朝まで泣いた私は翌朝目が腫れていた。

メイクである程度誤魔化し黒縁の伊達メガネをかけ、周りには『新しく変えたコンタクトが合わなくて…』と言って誤魔化したけど、宏海にはそんな嘘は通用しない。

昼休みには私のもとへ来て『そのメガネの理由を話してもらおうか?』と問い詰められた。


「宏海…有難う、でも私の中ではもう終わってるのだから同期としてお祝いしてあげたいの」


辰次郎さんに言われた言葉

『未練がないなら堂々と結婚式も出てやれば良い』

そぅ稔に未練などない。

この半年仕事に打ち込んで来て稔の事は全くとして忘れていた。

むしろ稔の事を忘れようと必死に仕事に打ち込んで来たのかもしれない……そのお陰で良い物が作れたのなら私にとっては良かったのかもしれない。


「美貴野あんたって人は…ハァー…仕方ない私も祝ってやるか!?ついでに披露宴でいい男見つけてやる!」


「宏海はどっちがついでなのか?!…」


「そんなのどっちでも良いじゃん!それより披露宴会場ってクレラントホテルだったよね?一流ホテルで大阪とこっちでお腹が大きくなってから2回も披露宴なんてしなくても良いのに…相手は良いとこのお嬢様らしいから我儘なんじゃない?木村も大変だ!」


「随分お腹も出てるだろうね?」と私は苦笑する。


あれから半年しか経っていないのに平常心で聞いていられる私自身も驚いている。

翌日、朝早くからヘアーサロンに行きネイルもお願いする。

碧い色のドレスだったので淡いピンクをベースにした桜の花びらを散らして貰いストーンをあしらって貰った。

ホテルに着くとロビーで宏美と待ち合わせをしていた私は、ロビーのカフェスペースで待つことにした。

暫くすると宏海が颯爽と現れた。


「美貴野、お待たせ!」


「あっ宏海、それ新調した?似合ってるよ」


宏海は黒のベルベットでAラインの膝丈のドレス、大きくあいた胸元には共布で小さなバラがあしらわれスカートはふわーとしてボリューム感があり大人の可愛らしさがあって宏海にはとても似合っていた。


「そう?奮発しちゃった、美貴野も凄く綺麗じゃん!こんな綺麗な美貴野見たら木村も後悔するんじゃない?」


「そんな事ある訳無いでしょ?冗談言ってないで受付に行こう」


「うん!いい男見つけないとね?さぉ気合入れていこう!」


宏海は右手拳を上へと突き上げた。


「アハハ…宏海、気合入れすぎ…」


披露宴も終わり宏海と少し飲んで帰ろうと行きつけの居酒屋に行く事にした。


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