ツケマお化けに恋して
困惑した面で部長の元から帰って来ると丁度出勤して来た宏海と部のドアの前で顔を合わせた。

「美貴野おめでとう、今年もヨロシク!」

「おめでとう、よろしく…」と大きなため息をついて新年の挨拶をする。

「その顔どうした?なにかあったの?」

「実は………」

デスクに着いて宏海に部長からの話を話して聞かせた。

「そりぁー大変だわ!仕事は出来ても自分の事全然分かってない美貴野が自分の事を自慢しなくちゃいけないんだもん同情する。 アハハ」と同情すると言いながらも宏海は大笑いする。

「別に書く事は任せるって言ってたから自慢話じゃなくて良いと思うけど…」

「何言ってるの美貴野の今回の功績が認められて書けって社長からの話なんだよ?どうでもいい話書いても書き直しになるわ!」

私の功績って…それはうちの部の功績であって私個人の功績など大したものじゃないし自慢など出来るほどのものじゃない。


その後会議を終え今に至る……

「ハァ……マジで書けない…あーもぅこんな事してらんない仕事しよ!」

宏海は笑ってその場を離れていった。



部長から広報の話があってから1週間を過ぎようとしていた。

あの後部長に相談したが宏海の言う通り『お前の功績の自慢話を書けば良いぞ』と簡単に言われてしまった。


広報の締め切りである今日、私は早朝出勤をしてパソコンに向かっていた。

「よし!出来た」

私は原稿を印刷するとそれを持って部長の所へ向かった。

「部長、おはようございます。頼まれていた広報の原稿てす」

「おー出来たか?」と言って私の差し出した原稿を受け取る。

部長は暫く黙って原稿に目を通していた。

「鈴木らしいな?」と微笑み「ご苦労さん」と労ってくれた。


壁に掛った時計は12時を回ったところだった。

お昼になっても皆んなが一緒に休憩を取ることはない。

まだ出先から戻って居ない人も多いし自分のデスクでパンを齧りながらパソコンに向かい仕事しをしている人、皆んな様々である。

宏海もまだパソコンに向っている。

「宏海、食事とらないの?」

「…うん……」

忙しそうだな?宏海が食事しないで仕事してるなんて珍しいなぁ。









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