ツケマお化けに恋して
朝、目を覚ますと気持ちが悪い。

でもそうそう仕事も休んで居られない。

だが通勤ラッシュの電車は辛い。

私はマスクをしてタクシーで出社する事にした。

編集部の扉を開けると仁美ちゃんが顔をこちらに向ける。

「編集長おはようございます。やっぱり風邪だったんですか?」

「おはよう!うん風邪だった」

自分のデスクに鞄を置き空気の入れ換えをしたくて席の後の窓を少し開ける。

「編集長!寒いですって!」

「あっごめん…」

仁美ちゃんに怒られ慌てて窓を閉め私は椅子に座るとパソコンの電源を入れる。

社員の予定の書かれているホワイトボードに目を向ける。

宏海の予定は何も書いてなかった。

「仁美ちゃん宏海は?」と聞くと「何も聞いてません」と、返事が帰って来た。

すると「橘先輩は久野先生の所へ原稿取りに行ってから出社するそうです」とカメラマンの井上君が教えてくれる。

「へぇーそぅ言う事?」

井上君は私達の2年後輩で最近宏海と仲が良いようだ。

井上君は今さっき出社したばかりなのに宏海の予定を知ってるんだぁと私はマスクの下の広角を上げる。


優美堂化粧品から新春発売される口紅に素晴らしい物が出る。

その為創刊から一周年の来月号は特大号で大きく取り上げる事になっている。

「仁美ちゃん優美堂化粧品の原稿まだ上がらないの?」

「すいません。今、送ります」

仁美ちゃんのパソコンかわ送られてきた原稿をチョックする。

「仁美ちゃん開発者にコメント貰ったんだよね?写真は?」

「すいません。お願いしたんですが…『自分は開発者だから裏方で良い表に出るのは主役である商品だから』と仰って…」

開発者は裏方、主役は商品… 

ふーん…会ってみたいなぁ

「仁美ちゃんこれで良いよ」

「本当ですか?ヤッター!一発合格だ!」

仁美ちゃんは本当に嬉しそうにはしゃいでる。

あの子も随分成長してくれたなぁ

私は嬉しくて微笑む。










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