ツケマお化けに恋して
4月に入りここ数日暖かい日が続いた為、桜が満開を迎えたとテレビで映像が映っていた。

私は久野先生のお宅の近くの公園を休みの日はゆっくり散歩するようにしている。
この公園も沢山の桜の木がある。

「綺麗だね。来年は一緒にお花見しようね?おばあちゃんもおじいちゃんもあなたに会えるの楽しみにしてるよ」とお腹に手を当て赤ちゃんに話しかける。



一週間前…

朝から体調も良く暖かかったので実家に帰った。

電話では妊娠の事は話していたが詳しくは話していない。

「ただいま」

「美貴野………悪阻はどう?辛い?」

「うん…まだね、でも久野先生が食事に気を使ってくれてるから美味しく食べれてるよ」

「そぅ良かった。やっぱりおじさんは凄いわ!」

母はひとり感心している。
私には何を言っているのか分からないが…

「今日店は良いの?」

母はあれから35年務めた仕事を辞め今は双葉寿司を手伝って居る。

「雅君が『美貴野ちゃんが帰って来るなら家に居てやれ』って言われてね、今日は休み」

「私なら良かったのに」

「ねぇ今夜は泊まって行くんでしょ?」

「ううん、帰る。明日仕事だしふたりのお邪魔はしたくないからね」と笑う。

「もぅ何言ってるのよ」

母は照れているようだ。

「雅君、美貴野が帰って来るの楽しみにしてたのよ!進歩君も会いたがってるわ」

「じゃ後でお店に顔出してお寿司ご馳走になってから帰るわ」


それから私は自分の部屋に入り年末に途中だった片付けを始めた。

今日帰って来たのは心配している母達に顔を見せに来たのは勿論だが、1番の目的は部屋を片付ける事だ。
母と雅さんはいずれ一緒に住むようになるだろう。雅さんの所にしろここにしろ、どちらにしても私の荷物が邪魔になる。ならば体の軽いうちに片付けようと思ったからだ。

「美貴野何してるの?」

「ちょっと片付け」

「疲れないようにしなさいよ」

「はーい」



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