ツケマお化けに恋して
進歩君に送ってもらい久野先生のお宅に着いたのは17時を回ったところだった。


「ただいまかえりました!」

「おかえり美貴野!」

リビングルームのドアを開けると宏海が来ていた。

「あれ?宏海来てたんだ?井上君は?」

「淳二は友達と飲みに行ってる。合コンとかほざいてた。あのバカ!!」

宏海機嫌が悪るそうだな…

そこに久野先生がリビングに入って来た。

「美貴野帰ってたの?」

「はい!つい先程、実家の父が先生にとお寿司を持たせてくれました」

リビングのテーブルの上に置いた風呂敷包を開ける。
寿司桶には色とりどりの握り寿司が詰められていた。

「わぁー美味しそう。よだれが出るわ」

「ちょっとヨダレなんて垂らさないでよ!」

寿司桶を宏海から離す。

そして「宏海にじゃなくて久野先生に何だからね」

「ケチ!こんなに有るんだから良いじゃん!」

宏海は子供のようにすねて言う。

「じゃー今日は乙女3人で女子会しましょ!」と久野先生の掛け声で女子会は始まった。

乙女って……52歳と34歳の水も甘いも知ってる女なのに乙女ってよく言うわ。……
本当の乙女に失礼だ。

「ねぇ宏海、お願いがあるんだけど、春物のコートとかをマンションから取ってきてくれないかな?マタニティーの服も買わなきゃいけないけど、もう少し今あるので間に合わせるからさ、悪いけど頼んでいいかな?」

「了解!今度の休みにでも取りに行ってくるよ」

「ありがとう」

それからは久野先生と宏海の楽しい時間、いや恐ろしい時間が始まった。

「美貴野ちゃーんお酒無いよ!持って来てー」

「はいはい……」

「美貴野、淳二ね本当に私の事好きなのかな?私の事好きならさ、合コンなんて行かないでしょ?ねぇ可怪しいよね?やっぱり年上はダメなのかな?」

自分は今まで付き合っている人が居ても関係なく合コン行ってたくせによく言うよ。ったく。
まぁ井上君にはそれだけ本気って事だろうけど。

「ねぇ美貴野、なんであんたお酒飲まないの?」

久野先生のいつものが始まった。

「妊婦はお酒飲んじゃダメなんです」

「へぇー。お腹の子…」

久野先生の言いたい事はいつもと一緒、だから私は話を遮った。

「はいはい、お腹の子の父親はオカマです。先生、宏海もうそろそろお開きにしよう?!」

「いやだ!あやちゃんって呼んでー!」

「きゃーあやちゃん可愛い!私もヒロちゃんって呼んでー!」

「ねぇ宏美!」

「ヒロちゃん!!」

あぁ面倒くさいのがもうひとり居たわ……

「はいはい、ヒロちゃん、明日お仕事ですよーはやくねましょうねぇー」

「はーい❣」

………疲れる……






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