ツケマお化けに恋して
「俺にはもう本当の家族など居なかったから、今更家族を作らなくてもいいと思っていた。10年あの店を続けてきてこのままオカマとして終わっても。だが…美貴野に会って自分の気持ちが少しづつ変わって来た。自分を捨てた男の心配をして酔っ払って男に喧嘩を売るし、酔っ払って毎回記憶を無くし反省はするが懲りずにまた酔いつぶれる。
料理は作れずコンビニ弁当ばかり食べている美貴野が気になって、痩せすぎてる美貴野をほっとけなくなって、いつの間にか好きになっていた。あの晩、美貴野が俺に体を預けてくれた時、年甲斐もなく美貴野を求めてしまった。美貴野を抱けた事が本当に嬉しかった。だが美貴野はそれを忘れてくれと言った。そして俺を避けるように姿を見せなくなった。やっぱり俺みたいなオカマを生業にしてる男はダメなんだと諦めようと思って居た」


辰次郎………


「諦めようと思っていたのに……」


辰次郎さんは顔を歪めて話を続ける。


「今朝、美貴野の同僚から男が好きなんだろ?と言われた。そりゃー化物みたいな格好はするしあんな店やってるから他人は誤解するかもしれないけど…美貴野は初めからずっと俺の事を辰次郎と呼んでいたし、美貴野を抱いた時だって美貴野は俺の愛撫でちゃん感じてただろ?何度も一緒にイッたろ?!だから分かってると思ったのに…」


辰次郎さんの話を黙って聞いて居たけどとんでもない話になって来た『愛撫で感じた』『何度も一緒イッた』なんて話、外でする話じゃない。


「ちょ、ちょっと待ってあの夜の話はもぅ良いから!それより、辰次郎の部屋に訪ねてきた人、本当に辰次郎の弟さんだよね?私も雑誌見たけど間違い無いよね?!
『あの人が僕の元から消えてからずっと探していたんです。…あの人が居ないと僕はダメなんです』って言ってたから辰次郎はあの人と付き合ってたと思ったのも、だから辰次郎は男の人が好きだって思ったのも皆んな私の勘違いだったんだよね?!」

「あぁ美貴野の勘違い。崇仁は俺には頼る癖があったから最近、社長の親父が体を悪くして引退を考えて居るらしくて、何かと他の役員が煩いらしい。気の小さい崇仁は社長に向いてないと言ってな。だから俺に戻って来て会社を継いで欲しいと言って来たんだ。それに俺は会社の筆頭株主だからな発言力はあるんだよ!」


「ほ〜そぅなんだ」


「で、誤解は取れしお腹の子の父親はここに健在なんで、父親の話をわざわざ母親が話さなくても父親である俺が一生この子の側にいて話してやる!!」


辰次郎さんは私のお腹に手を当て話してくれる。

そして辰次郎さんは私の左手をとり薬指にピンク色の石の付いたリングを嵌めてくれた。


「もぅ離さないからな!隠れてもきっと探しだす!ずっと俺の側に居てくれ俺の家族として、美貴野愛してる」


「私も…愛してる」


辰次郎さんの唇が桜の花びらと一緒に落ちて来た。




< 98 / 103 >

この作品をシェア

pagetop