猫
朝、彼女が目を覚ますと彼はトーストを焼いて一人でほおばっていた。
「どこ行ってたの?」
と、聞けばいいのに。
聞けばいいのに彼女は、彼に話しかけずテレビを観て笑った。
「昨日さ……」
「ふうん、そう。別にいいけど」
彼の話をちゃんと聞けばいいのに。
聞けばいいのに彼女は、興味ないような、気にしていないフリをして、
適当に話を遮った。
彼はため息をついて、ストラップを手元で弄んだ。
猫じゃなくても、人間だってじゃれる。
だけどちっとも楽しくなさそうだった。