君と歩むから
「…それなのに母さんは…」
俺を捨てた。
俺は下を向き歯を食いしばった。
あの頃の想いを思い出して涙が出そうになったからだ。
「…今更こんな話をしてもしょうがない。それより弟どうしてるだ?一緒に住んでないのか?」
そうだ、今は昔話をしている場合じゃない。
昨日携帯にかかって来たしらかわ園ってなんだよ。
「…今は児童施設で生活しているわ」
「…は?施設?」
なんで母親が生きてるのに施設なんだよ。
「…2年前から入っているわ」
「俺にはばーちゃんがいたけど、弟には……母親のあんたしかいないだろ!どうして育ててやんないんだよ!なんで…なんでそばにいてやんないんだよ!!」
俺にはばーちゃんがいた。
母親ではないけど、確かに血の繋がった肉親がいた。
弟にはあんたしかいないはずなのに、なんで…。