君と歩むから



「…それなのに母さんは…」




俺を捨てた。



俺は下を向き歯を食いしばった。
あの頃の想いを思い出して涙が出そうになったからだ。


「…今更こんな話をしてもしょうがない。それより弟どうしてるだ?一緒に住んでないのか?」


そうだ、今は昔話をしている場合じゃない。
昨日携帯にかかって来たしらかわ園ってなんだよ。


「…今は児童施設で生活しているわ」


「…は?施設?」


なんで母親が生きてるのに施設なんだよ。


「…2年前から入っているわ」


「俺にはばーちゃんがいたけど、弟には……母親のあんたしかいないだろ!どうして育ててやんないんだよ!なんで…なんでそばにいてやんないんだよ!!」


俺にはばーちゃんがいた。
母親ではないけど、確かに血の繋がった肉親がいた。
弟にはあんたしかいないはずなのに、なんで…。





< 9 / 13 >

この作品をシェア

pagetop