ライ・ラック・ラブ
「…お嬢様。お嬢様?…春花お嬢様」
「えっ!?あ、はいっ?何か言った?佐久間さん」
「いえ、何も」
「まあ。だったらどうして私を呼んだのよ」
「いや!それはですね、えっとー…今日のお嬢様はずっと、どこか上の空にいらっしゃるような、心ここにあらずといった感じがしまして。悩み事ではないようにお見受けしておりますが。何かあったのかと思いまして」
「…私?」
「はい」

さすが佐久間さん。
いつも人をよく見ているし、さりげない配慮を怠らないのもいつものことだ。

父の会社の社員さんの中でも、父の第二秘書をしている佐久間さんとは、よく接している方だと言える。
チャリティーイベントの舞台づくりなど、力仕事が必要な時は、必ず手伝いに来てくれるし、生け花教室の送迎は、いつも佐久間さんがしてくれるから。

まだ考え事をしている私に、「今日の花はどちらに活けますか?」と佐久間さんが聞いてきた。

「屋敷よ。でも私、この後会社へ行く予定なの」
「分かりました。花を活け終えた後、すぐ会社へ行きますか?」
「そうね…1時間程後になりそう。佐久間さん、お時間は?」
「私の事はご心配なく」と会話をしているうちに屋敷に着いた。

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