ライ・ラック・ラブ
その時の私の顔は、さぞかし間抜けだったと思う。
とにかく、自分がプロポーズをされたことが信じられなくて、他人事のように感じながら、私は瞬きを繰り返し、向かいに座っている正さんを無言で見ていた。

「…今夜、君にプロポーズするつもりだったから、君と俺にとって、どうしても特別な、思い出深い記念日にしたかったんだ。それで相応しい場所にと思って選んだのがここで。二人で美味いクリスマスのコースディナーを食べて。とにかく、君には思いっきりロマンチックな気分に浸ってほしくてさ……。あの、春花さん。春花さん?」
「はっ?はいっ?」
「何か言ってほしいんだけど…できれば“はい”って返事が欲しいな」

そう言ってニコッと笑った正さんからは、緊張した雰囲気なんて微塵も感じなかった。
代わりに、堂々とした、清々しい、普段通りの感じを漂わせている。
どうやら私にプロポーズを言った段階で、正さんの緊張はどこかへ行ってしまったようだ。
まるで私が「はい」と言うことが分かっているみたいで。
…さすが、自信家な正さんらしい。

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