ライ・ラック・ラブ
…ついさっきまで、愛し、愛されていると思っていた婚約者から、散々バカにされたと言うのに。
もうこれ以上、父の暴言を聞きたくなかった私は、踵を返してドアの方へ歩きだした。
でも、「待ちなさい春花」と父に言われた私は、そこで立ち止まるとクルッと後ろをふり向いた。

「結婚はします。もちろん正さんと。明後日、ちゃんと入籍するし、結婚式も挙げるし、披露宴も行います。私は逃げも隠れもしないし、自殺もしません。だからお父様は心配しないで」

父を安心させるよう、微笑みはしたけれど、その微笑みは悲しさを隠しきれていないと、自分でも分かっていた。

でも、父にはいつも通りの微笑みに見えたに違いない。
ブスな顔に無理矢理愛想笑いを浮かべた、不細工な微笑みに。

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