ライ・ラック・ラブ
…あのとき正さんが言った通り、父は正さんの味方だった。
さっきの会話で、正さんの方が私よりも大事だと、父は遠回しに認めたようなものだ。
もっと言えば、父は、私よりも自分が創って経営している会社が一番大事だと…娘の幸せよりも世間体を気にしていると、ハッキリ認めた…。
分かってはいたものの、今、この事実を突きつけられるのは、ちょっと…辛い。

私は、顔を俯き加減にし、出口に向かってひたすら歩いた。

会社(ここ)では涙を流さない。
泣くのは後よ。
と自分に言い聞かせながら。

白い大理石の床に、ヒールの音がコツコツと響き渡る中、やっと出入口の自動ドアを通り過ぎた矢先、「お嬢様?」と声をかけられた。

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