ライ・ラック・ラブ
1時間弱の間、ずっと車中で待ってくれていた佐久間さんは、秋子さんのお宅から出てきた私を見るなり、パッと車から出て、助手席のドアを開けてくれた。

「ありがとう」とお礼を言った私に、佐久間さんは端的に「いえ」とだけ言った。
私をそっと見守るような、彼のいつもの気遣いも、今日はとてもありがたく感じる。

「次はどちらへ」
「屋敷へ。妹たちに話をしなければ」
「分かりました。社長はただいま会食の最中のはずなので、まだご帰宅されていないはずです」
「そうね」

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