ライ・ラック・ラブ
「分かってるわ、夏子。私はお父さんに言われたから結婚するんじゃないの。それに正さんのことも、もう愛しているとは思ってないし、彼も私のことを愛してない」
「だったら」と言う冬美を制するように、私は「それでも」と続けた。

「ここで結婚を取り止めても、お父さんはまた、他の人をあてがうかもしれない。もしかしたら、あなたたちの誰かにそうするかもしれない。私たちの財産を凍結させるかもしれない。夏子、あなたは来月からフランスの大学院へ留学することが決まってるわ。秋恵の治療費を出さないなんて、まさかそこまで非情なことはしないと思うけど…。冬美には、大学の学費を出さないと言ってくるかもしれない。でもその時は私が学費を出すし、秋恵の治療費だって払うから、心配しなくていいのよ」
「え。でも、春花姉さんもお金が…」
「私は20歳の誕生日から、投資で貯めた私財を隠し持ってるから大丈夫。この事はお父さんも知らないから、誰にも話しちゃダメよ」と私が言うと、3人の妹たちは皆コクンと頷いた。

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