好きやった。
・嘘と本音と涙
×××
「えっ、買い物?」
「そう。日曜日に付き合ってくれやん?」
月島と彼女の喧嘩を目撃した日の放課後。
部活を終えて更衣室を出るとそこで月島に待ち伏せされていて、とんでもないことを頼まれてしまった。
うーんと渋るウチに、月島は自分の顔の前でパンッと手を合わせながら懇願してくる。
「頼むよ、井ノ原! おまえだけが頼りなんやって。デートできやん上にプレゼントでも失敗したら、マジで嫌われてしまう。それだけはなんとかしやなあかんのや!」
月島の頼みは、彼女に渡すクリスマスプレゼントを一緒に選んでほしい、とのことだった。
デートができない分、せめてプレゼントでは彼女を喜ばせたいらしい。
そりゃあ、そうしたい月島の気持ちはわかるけど……。
なんでよりによって、頼む相手がウチなんやろう。好きな人の彼女へのプレゼントを選ばなあかんとか、嫌がらせか何かかと思えてくる。
友達でいようとすると、こんな目にも遭わなあかんなんて……。嫌なポジションやな、好きな人の友達って。
「日曜日なら、女バスも休みやろ? だったらええやんか」
「ウチに用事があるっていう選択肢はないのかね、アンタは」
「えっ、用事あんの?」
「……ないけど」
「やろな~。彼氏もおらんぼっちの井ノ原に、早々予定なんか入らんわな~」
「彼女にフラれてしまえ、このクソ野郎!!」
「えっ!? わー、ちょっと待ってくれって!」
クソや。コイツ、ほんまにクソ野郎。
人の気持ちを知らんにもほどがある。
誰を好きでおるから、ウチがぼっちでおるのか。その気持ち、微塵も感じていない。
わざとらしくどしどしと歩き始めたウチの進行方向に、月島が慌てて立ち塞がってきた。