好きやった。
「……でも月島は、ウチと友達やめたいんとちゃうの? 自分だってウチのこと避けてたやんか」
ウチだって月島を避けていたけど、月島だってそれは一緒だった。
自嘲しながら言葉を紡ぐ。
「都合ええと思って避けたんとちゃうの? 自分に告白してきた面倒なやつと関わらんで済むからって」
「違う! 俺は井ノ原のこと、面倒やなんて思ってない! だから今こうやって、井ノ原の向き合ってんだよ!」
バスケの試合のときみたいに必死な顔になっている月島は、嘘を言っているようには思えなかった。
……だからむしろ、苦しくなる。
「避けたんやなくて……なかなか声かけれやんだ。井ノ原の気持ちを聞いて……俺が今までどんだけ傷つけてたのかって考えてたら、何をどう話そうか迷ってしもうて」
月島がいっそ、ウチの嘘を鵜呑みにしてくれるようなやつならよかったのに。
そうすれば、月島の優しさにこんな苦しい思いをしなくても済んだ。ウチの余計な気持ちで月島を悩ませることもなかった。
「……ウチのことなんて、放っておいてくれたらよかったのに」
「放っとけるわけないやん。大事な友達なんやで。それに俺が、井ノ原と友達やめたくないんや」
眉尻を下げて月島は微かに笑う。
月島なりの精一杯の優しさが伝わってきて泣きそうになった。唇を噛んで堪えてから、小さな声で言う。
「……でもいつか絶対、後悔するよ。ウチとの関係は、きっと気まずくなる」
「それでもええよ」
「なんでそこまで……」
そう尋ねておきながらも、なんとなく月島から返ってくる言葉は予想できた。