好きやった。


「……ウチも、ずっと月島と友達でおりたい」

「うん」

「正直まだ彼女の話聞くのもつらいし、あんまり二人のこと喜べやんけどな……。それでもな、ちゃんと二人のこと、心から喜べたらええなあって思っとる。月島のこと、困らせたり傷つけたりしたいんとちゃうの。笑っててほしい」

「うん……ありがとな。俺だって、井ノ原には笑っててほしい」

「あと、それからな……」


月島の身体からそっと離れる。

どうしてもこれだけは、面と向かって月島に伝えたかったんだ。


「ウチ、月島のこと……」


どんだけ好きやと思っても、月島の心は手に入らなかった。

でも、でもな――。


「めっちゃ、好きやった」

「――、」

「誰にも負けやんぐらい、めっちゃ好きやったよ」


この想いは、なかなか消すの難しいけどさ。

ちゃんと笑って、友達として月島のそばにいられるように頑張るから。

せめて、ウチが心から好きだったことを、月島にも知っておいてほしい。

わがままかな?


「――ありがとう」


月島は、笑ってくれた。ウチのわがままな気持ちでもちゃんと汲み取ってくれた、その思いやりを感じさせてくれる。

……ほんまにずるいな、月島は。

このタイミングでウチが大好きな笑顔を見せるなんて。

でもそういうところ……好きやに。


好きやった。



 ×××



「あっ……亮子。大丈夫?」


月島と別れて更衣室に入ると、中に一人でいた留美に出迎えられた。

第一声が「大丈夫?」やなんて、留美はどれだけ心配性なんだろう。

ふっと笑みをこぼして、ロッカーの前に移動した。留美に背中を向けて言う。


< 62 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop