好きやった。
「大丈夫やよ。詳しいことはあとで話すから、先に玄関に行って待っといてくれる? ウチも着替えたらすぐ行くから」
「そっか……。わかった、待っとるね」
留美は心配の色を声に宿していたけど、荷物を持つとそっと更衣室を出ていった。
ガチャンとドアが閉まった音を聞いてから、ジャージのズボンの右ポケットに手を入れる。
そこから取り出したのは……サルのぬいぐるみのキーホルダー。
昨日雑貨屋で見たあれで、さっき別れ際に月島からもらったものだ。
『これ……やるよ』
『えっ……これ、あのサルやん。なんでウチに?』
『クリスマスプレゼント。昨日付き合ってくれた礼に渡そうと思って買ってあったけど、渡し損ねてた』
『お礼なら肉まんあんまんで十分やったのに……。しかもクリスマスプレゼントって、早くない?』
『仲直りの記念だよ。受け取れ』
『なぜに上から目線……。ていうか、もう少しましなもの選んでくれてもええやん。よりによって、あの威嚇しとるサルとか……』
『なんだよ。好きな人が選んだものなら喜ぶんやろ? おまえそう言っとったやん』
『うっ、それを今言うなんてひどい……』
『いらんならやらねー』
『いりますください! どうもありがとう!』
『素直でよろしい』
月島との一連の会話を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。
可愛らしくデザインされているサルのぬいぐるみを両手で包み込む。
「……嬉しいに決まっとるやん。好きな人がくれたんやから」
お腹の部分を強く握ったらちょうど鳴き声発声装置のボタンを押したらしく、あの威嚇の鳴き声が静寂の更衣室にけたたましく鳴り響いた。