ねぇ、好き?
考え込んでいる私に、


「あぁ、佐々木か……」


阿部は呟く。


「えっ?」

「その話、佐々木の事だろ?」


“何もかも知っています”と言うかのように、阿部はフッと笑う。


「えぇっ!?な、なんで知ってるの?」


私はこの話を、今まで誰にも話した事はない。

それは、碧にだって。

だって、昨年まで私は崇と付き合っていたし、それに、佐々木のこの発言も冗談だと思っていたから。

でも、何で阿部が知っているの?


「何でって、いつも佐々木がぼやいているから」

「ぼやいているって……、どうして?」


やっぱり冗談じゃないの?

私の事を好きだと思ってくれているって事?


佐々木の事を意識している今、佐々木が私の事を好きだと思ってくれていたのであれば、すごく嬉しい。

いつも言う

「付き合って」

それが、本心なら。


でも、佐々木は一度も“好き”だなんて言ってくれた事はない。

それに、佐々木には彼女がいる。

その事実がある以上、私はやっぱり

“からかわれているのかな?”

そう思ってしまう。


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