ねぇ、好き?
確かに……

動揺はしている。

でも、本当に気のせいかもしれない。

私の見間違いかもしれない。

だって、崇は浮気をするような人じゃない。

そう思っているのに……

いや、本当は、そう言い聞かせているのに……


「無理して笑わなくていいよ」


優しくそう言うと、佐々木は私の腕を引っ張る。

そして、人気のない裏路地へ。


「ここなら、誰にも見えないよ」


優しくそう言って、そして、


「言いたくないなら、何があったのかは聞かない。だけど、泣きたいのを我慢すんなよ。そんな辛そうな弥生、見たくない」


佐々木はぎゅっと力強く私を抱きしめる。

そんなに優しくされたら……

私の中の不安が爆発する。

だって、言い聞かせていただけだから。

本当は、“どういう事?”って、今すぐにでも崇に聞きたいし、すごく不安なんだから。

最近、“忙しい”という理由で、崇とはあまり会っていない。

月に一、二回会えたらいい方だ。

あまり会えてはいないけど、連絡だけはちゃんと取っていた。

電話で話す日もあれば、メールだけの日もある。

連絡だけは毎日取っていたけど、その時に変わった様子はなかった。

だから、私は今まで何も心配なんてしていなかった。


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