カリスマ社長に求婚されました
「そう……」

本気で言っているのが分かって、奈子さんから言われた話をするタイミングを失ってしまった。

彼女にまだ未練があると伝えたら、優一さんはどう思うだろう……。

「ねえ、優一さん。奈子さんは、やっぱり大事な人よね? 嫌いになったから、別れたわけじゃないんでしょ?」

軽快に車を走らせながら、優一さんは小さく頷いた。

「ああ。嫌いで別れたわけじゃない。奈子のことは、同じ夢を追う人間として、力になりたいと思うし、彼女の成功だって祈ってる」

キッパリと言われて、改めて伝えてはいけない気になっていた。

もし、奈子さんの本当の気持ちを知ってしまったら、優一さんは心配するんじゃないかと、不安になってくる。

今は、彼女が前に進んでいると思っているから、応援しているみたいだけど、実は気持ちは立ち止まったままだなんて分かったら……。

自分の中のズルイ部分が顔を出してきて、優一さんに奈子さんの気持ちを伝えてはダメだと言ってきた……。
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