カリスマ社長に求婚されました
「優一さん……」

少し照れくさくて、はにかんだ笑顔で優一さんを見上げる。

ひとりが寂しくないわけではないけど、こうやって私への想いをみせてくれるから、心はじゅうぶんに満たされていた。

優一さんも笑みをみせて、今度は額にキスを落とす。

「じゃあ、行ってくる。早めに帰れると思うから、夜はゆっくりしよう」

「うん」

玄関先で優一さんを見送ると、広いマンションにひとり残されて、なにか物足りなさを感じ始めた。

金曜日、奈子さんから、優一さんが私を秘書にしたことを、公私混同だと言われた。

その言葉がどこか引っかかっていて、気持ちがモヤモヤしている。

「そんなことはないって、言い切れなかったのよね……」

ゆっくりとバルコニーに向かうと、そこから朝の街を見下ろす。

夜とは全然違って、ロマンチックなムードはなにもない。

だからか、よりリアルに見えて夢見心地な気分は持てれなかった。

私にもなにか、取り柄ってないのかな……と、それを考えてしまうのは、きっと奈子さんの存在を知ってしまったからだ。
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