カリスマ社長に求婚されました
茉奈の迷い
「お疲れ、坂下」

給湯室で来客用のマグカップを洗っていると、柊也さんが声をかけてきた。

「あ、お疲れ様です」

柊也さんから声をかけられるのが珍しくて、不必要に緊張してしまう。

カップを洗い終えてカゴに置くと、早々にその場を出ようとした。

すると、

「優一のとこに泊まった?」

と不意に聞かれ、一気に鼓動が速くなった。

「えっと……、泊まったというか……」

同棲のことを話していいのか、迷ってしまう。

優一さんからは特に口止めはされていないけど、簡単に言っていいものか分からず、言葉を濁していると、柊也さんがアッサリと指摘した。

「優一と同じ匂いがするから。泊まったというより、同棲し始めたんだな?」

「えっ⁉︎」

同じ匂いと言われて、なにがそうなのかいろいろと思考を巡らせてみる。

まさか、優一さんに抱かれただけで香りは移るものなの?

たしかに、優一さんは甘くもスパイシーな色気のある匂いがするけれど……。

「あ、分かった。シャンプーだ」
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