カリスマ社長に求婚されました
すると、彩子さんは驚いたように足を止めた。

ちょうどみんなのいる島の手前だ。

出勤している人はまだチラホラで、話が聞かれそうで気まずい思いを持ちながらも、合わせて立ち止まる。

「うん、そうなんだけど……。優一から聞いてないの?」

優一さんの名前を出されると、軽い抵抗感を覚えてしまった。

今までは、こんなことはなかったのに、周りの反応が気になって仕方ない。

「はい。社長はプライベートで、そんなに仕事の話はされないので」

あえて『社長』という言葉を使ったのも、他の社員の人たちに聞こえてもいいように。

そして、自分たちの知らないところで、あれこれ話をしているわけではないとも、アピールしたかった。

「そっか。実はね、上顧客の方たちから、茉奈ちゃんの応対が感じよくて、癒されるって何件かお声をもらったのよ」

「そ、そうなんですか⁉︎」

電話や来客として対応はさせてもらっているけど、まさかそんな風に言ってもらえているとは想像もしていない。

だから、彩子さんから聞かされて素直に嬉しかった。
< 129 / 287 >

この作品をシェア

pagetop