カリスマ社長に求婚されました
「茉奈ちゃん、今夜はオレが忘れさせてあげるよ。きみの辛さを全部。そして明日から、前を向いて進もう」

「相良さん……」

ハンドルを握る相良さんの横顔は真剣そのもので、そこまで想ってくれる気持ちに、熱いものがこみ上げてくる。

どうして、見ず知らずの私のために、ここまでしてくれるのかは分からないけど、絶望感に覆われていた気分が、ほんの少しだけ晴れた。


「茉奈ちゃん、もうすぐパーティー会場に着くよ」

「え? この辺りであるんですか?」

相良さんの言葉に、車窓から外を見てみると、街灯がまばらにしかない寂しい場所を通っている。

街の中心地から離れたこの場所は、大きな原っぱがあり、夏には野外フェスが行われるけれど、それ以外はなにもない。

これ以上先は海しかないのに、相良さんの車は迷いなく進んでいた。

「ああ。今夜のパーティーは、船上パーティーなんだよ」

相良さんは穏やかに言うと、速度を少し速めた。
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