カリスマ社長に求婚されました
どんよりとした暗い気持ちを隠していたつもりなのに、彩子さんが片付けながら声をかけてきた。

「さっきのことは、気にしなくていいわよ。仕事のときの優一は、ピリピリするところがあるだけだから」

「彩子さん……」

周りに心配をかけさせていることが、とにかく心苦しい。

仕事ぶりを評価されたと聞いて、浮かれすぎていたのかも……。

「彩子さん……。私みたいな人間が、そもそも優一さんと付き合っていることが不思議ですよね?」

ふとこぼれた弱気な言葉に、彩子さんは目を見開いた。

「なに言ってるの? 全然、不思議じゃないわよ。茉奈ちゃんってば、そんなに落ち込まないで」

一生懸命、彩子さんが慰めてくれるのに、心の中は少しも晴れない。

評価のことだって、優一さんが話してくれないのは、彼のなかでは評価に値しないからかもしれないし……。

「私、もしかして勘違いしていたのかもしれません……」

「茉奈ちゃん?」

優一さんの心の支えになれているかもとか、私もellに貢献できることがあるかもしれないとか。

すべては、私の思い込みだったのかも……。

「私、優一さんといることに疲れちゃいました」

「ちょっと茉奈ちゃんってば……」

短期間で、奈子さんや蓮士さんと出会って、心が乱されている。

そのうえ、肝心の優一さんとは、仕事が多忙でまともに話ができていない。

涙さえ浮かびそうになったときだった。

ノックとともにドアが開いて、優一さんが入ってきた。

「片付けは終わったみたいだな」

「優一さん……」

やっぱり気まずいな。

パーティーの間は、なんとか乗り切れたけど、改めて顔を合わせると居心地が悪い。

「残りはオレが持っていくから。彩子、柊也が待ってるぞ」

「あ、うん。じゃあ、お疲れ様。茉奈ちゃんも、また月曜日に」

「はい。彩子さん、ありがとうございました」

彩子さんが出ていくと、優一さんはドアを閉めて私に近づいてくる。

まだ怒っているのか、表情が険しい。

それでもなにか声をかけなくちゃと思っていると、優一さんが私の名前を呼んだ。

「茉奈……」
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