カリスマ社長に求婚されました
チラッと彼の視線が、スマホを握りしめたままの私の手に動く。

「それは……」

ちょうどいいタイミングだから、この場で言ってしまおう。

隠すことでも、隠していいことでもないから……。

「蓮士に電話してた?」

と、私が答えるより先に、優一さんがぶっきらぼうに聞いてきた。

「えっ? まさか、そんなはずないじゃない」

突然、蓮士さんの名前を出されて動揺する。

なにせ、今度参加しようとするセミナーの講師が、蓮士さんの知り合いなのだから。

柊也さんたちが知っているくらいだから、優一さんも名前くらいは分かるかもしれない。

こんな疑いを持たれると、ますます話しにくくなってしまう。

「じゃあ、なんでコソコソ電話するんだ? それも、逃げるように出ていかなくても……」

それは、受付時間が迫っていたからで、深い意味があったわけじゃない。

それを説明すればいいだけなのに、疑われていることですっかり気分が滅入ってしまい、言い訳すらできなかった。

「逃げたんじゃない……」

ようやくボソッと言った私の言葉を、優一さんは怪訝な顔で聞いていた。

「じゃあ、なに? 昨日の今日でこんなことをされたら、いろいろ誤解も生まれるだろ? 違うなら本当のことを言ってほしい」
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