カリスマ社長に求婚されました
すると、蓮士さんは掴んでいる手を引き寄せた。

至近距離まで顔が近づき、驚きというより恐怖が増してくる。

どうしてこんな中心地なのに、この路地はひと気がないのだろう。

薄暗い場所で蓮士さんとふたりきり、それも息がかかるほどの距離で、声をあげることもできない。

「れ、蓮士さん……。やめてください」

どうして、こんなことをするのだろう。

これも、優一さんへの挑発のひとつ?

「やめないよ。茉奈ちゃんが、優一に愛されてるわけ、分かったから」

「どういうことですか……?」

蓮士さんが話しかけるたびに、息がかかる。

「なんだか目が離せないんだよな。意思が強そうで、でも頼りなげで。そして、癒されるオーラを放ってる」

「蓮士さん……。でも、だからってこんなことは、やめてください」

「いやだね。優一には、オレが恨まれるから」

「え?」

言葉の意味が分からず一瞬ア然とした隙に、蓮士さんは私の顎を引き上げた。

とっさにキスをされると思った私は、顔をそむけようとするも、強い力で戻される。

「優一は、他の男とキスをした恋人を、絶対に許しはしないよ」

「やっ……!」

やだ……、蓮士さんとキスをしたくない。

心の叫びとは反対に、彼の顔は近づいてきた。
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