カリスマ社長に求婚されました
一日がかりの研修が終わってみると、疲れと同時に充実感もいっぱいだ。

ランチがひとりだったのは寂しかったけど、それ以外は座学にロープレをしたりと、マンネリにならない内容で大満足。

コミュニケーションに必要なスキルや考え方が学べたことだし、帰ったらさっそく優一さんに報告しよう。

ついでに、和也の彼女の名前も分かったのは、余計な収穫だったけど……。

「あとで和也に電話しようっと。そうだ、坂下さんも一緒に車で帰ります? 送りますよ」

「いいです……」

本当に、どこまで意地悪なんだろう、二宮明子さん。

心の中で嫌みを呟いたとき、突然どよめく声が聞こえてきた。

「ん?」

私たちより前の席にいた人たちが、ドア付近に目をやり顔を緩めている。

まるで、有名人でも現れたかのような反応を不思議に思いながら、自然と私も二宮さんも彼女たちの視線の先を追うように振り向いた。

「あっ……」

そこには優一さんがいて、愛想のいい笑顔を浮かべて部屋に入ってくるところだった。
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