カリスマ社長に求婚されました
ふたりの会話をみんな聞き入っていて、誰も帰る気配がない。

私もその雰囲気にのまれて、足が止まっていた。

「はい、実は先生のセミナーに、僕の恋人が参加してまして、迎えに来たんです」

と優一さんが言った途端に、悲鳴に近い声が上がる。

「そうだったんですか⁉︎ どなた?」

先生が興味津々に私たちを見回すと、みんなも「誰、誰?」とキョロキョロしている。

そんな中で私は、ひとり恥ずかしさを感じながら、黙って立っていた。

「茉奈、帰ろう」

優一さんは私の方を向き歩み寄ると、手を差し出す。

「坂下さんだったの⁉︎」

誰の声とも分からないけど、ただみんなが驚きの顔で私を見ていることは気づいた。

手を差し出されてしまい、人前で照れくさいけど、私も自分の右手を控えめに伸ばす。

その手を優一さんがギュッと握った瞬間、またもや小さな悲鳴が上がった。
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