カリスマ社長に求婚されました
部屋を出ると、外で待っていた向井さんが笑顔を向けてくれた。

相良さんは彼女にお礼を言うと、私の背中を軽く押して先を促す。

ふたりの短い会話からでも、相良さんが向井さんと顔見知りなのが分かった。

それに、この船のこともよく分かっていて、一体相良さんは何者なのだろうと、疑問は募るばかりだ。

だけど、私がそれを詮索する筋合いはない。

ここに連れてきてもらって、身に余るドレスアップもさせてもらえた。

それだけでじゅうぶんで、彼が何者かなんて知る必要はない。

どのみち、一夜限りの偶然の出会いなのだから……。

今夜の私は、シンデレラと同じで、魔法にかかっているだけ。

明日になれば、相良さんは私のことなんて、きっと忘れていく。

だから、ほんの数時間だけ、夢を見させてもらうつもりでいよう。

失恋の傷を癒す夢を……。
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