カリスマ社長に求婚されました
顔が熱くなるのを感じながら、小声で言うと、優一さんは少し悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「いいんじゃないか? オレは、元カレに見せつけたいけどな。茉奈は、絶対に返さないよって」

「優一さん、気づいてたの?」

驚きで目を丸くする私に構わず、優一さんはスーツの胸ポケットからハンカチを取り出した。

出会ったときと同じく、器用に膝に巻いていく。

「すぐに分かったよ。あの彼女と一緒だし、それに茉奈に未練のある顔をしてる」

優一さんはハンカチを巻き終えると、真剣な顔で私を見上げた。

「まさか……。和也は、私を重い女だとか言ったのよ?」

変に緊張感が増すのは、あまりに優一さんが真面目に言うから。

「きっと、茉奈と離れて後悔したんだろう。さっきも、茉奈のことを気になってたとか言ってたじゃないか」

「聞こえてたんだ……。でも、そうだとしても、私は和也に未練なんてないから」

優一さんに誤解だけはされたくないし、和也とはキッパリ終わったものだと思っている。

だから、ここで自分の気持ちはハッキリ言っておかなければ……。

「当たり前だ。茉奈は誰にも渡さない、この間もそう言ったはずだ。茉奈だけが、オレの永遠の愛する女性だから」
< 230 / 287 >

この作品をシェア

pagetop