カリスマ社長に求婚されました
その点は安心していいだろうから、さっさと渡して戻ってこよう。

社長室を出た私は、足早に蓮士さんの職場である外資系銀行へ向かった。

お昼前のオフィス街はビジネスマンが行き交い、車のクラクション音などで喧騒に包まれている。

十分ちょっとで銀行に着き、指示通り正面から入る。

窓口が三つほどあるけど、順番を待っている人はふたりしかいない。

静かなクラシック音が流れていて、銀行にありがちな騒々しい雰囲気はまるでなかった。

案内役の女性に名前を言うと、丁寧に奥へと案内される。

窓口の前を通り過ぎるとき、そのなかのひとりの女性が小さく会釈した。

一瞬誰だろうと疑問に思いながらも、すぐにセミナーで一緒だった人だと分かった。

たしか、大間さんという二十代後半の人だ。

「そっか……。ここの人だったのね」

ボソッと呟いている間にも、奥の応接間へと通された。
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