カリスマ社長に求婚されました
たしかに、相良さんに肩を抱かれているのだから、誤解をされても仕方ない。

「いえ、私は相良さんの恋人ではないんです……」

おずおず否定すると、嶋谷副社長が由香さんの腕をさりげなく突いた。

彼女は余計なことを聞いたと思ったらしく、「すみません……」と言って、バツ悪そうに小さくなっている。

すると、相良さんが穏やかな口調で、私を紹介してくれた。

「彼女は坂下茉奈さん。今夜はオレと同伴しているんだ」

「そうだったんですか。どうぞよろしくお願いします」

嶋谷副社長は、愛想よく応えると、由香さんを促し先に降りていった。

「相良さん、誤解されちゃいますよ……。手を離していただけませんか?」

相良さんを見上げると、彼はニコリと笑みを浮かべた。

「女性をエスコートするときに、肩を抱くのは不自然な行為じゃない。ただ、茉奈ちゃんが不快なら離すけど」

「不快なんかじゃないです。失恋ショックを、十分誤魔化せているので。ただ、相良さんに迷惑がかかります。私が恋人だと、他の方にも思い込まれますよ?」

勘違いされて、相良さんは嫌じゃないのか、そんな当たり前の疑問を持って聞いてみたけど、彼は涼しい顔をしている。

「別に構わない。それより、茉奈ちゃんが、オレのことを心配しなくていいんだよ。今夜はとにかく、少しでも楽しんでほしいから」

「相良さん……」

不思議な人……。

なんの面識もない私に、どうしてそこまでしてくれるのだろう。

分からないことだらけのまま、私は相良さんに促されてメイン会場に向かった。
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