カリスマ社長に求婚されました
翌朝、七時に目が覚めた私は、着替えを済ませて朝食を済ませる。

朝ごはんは、自分の希望する時間に部屋へ持ってきてくれるサービスになっていて、オムレツやサラダなどを堪能した。

時刻は九時になっていて、向井さんがドレスを取りにきてくれた。

「おはようございます、向井さん。あの、相良さんのお部屋は、どこかご存知ないですか?」

ハンカチを返そうと思ったけれど、肝心の部屋の場所を聞いていなかった。

しかも、携帯番号も聞いていない。

最後にもう一度お礼も言いたいから相良さんに会いたいけど、向井さんは眉を下げて残念そうな顔をした。

「相良様は、急なお仕事で朝早く帰られたと聞いています」

「えっ? 帰った?」

じゃあ、もう二度と会えないということ……?

覚悟はしていたけど、あっけない別れに放心状態になる。

「あの、相良さんからハンカチを借りていてお返ししたいんですが、連絡先を教えてもらうことはできませんか?」

せめて、会社の連絡先だけでも聞けたらと、わずかな望みをかけてみたけど、向井さんはゆっくり首を横に振った。

「申し訳ありません。私は存じ上げませんし、仮に知っていたとしても個人情報はお教えできなくて……」

「そうですか……。ご無理言ってすみません」

それなら、せめてハンカチだけでも預かってもらえないか頼んでみたけれど、次はいつ相良さんに会えるか分からないという理由で、断わられてしまった。
< 33 / 287 >

この作品をシェア

pagetop