カリスマ社長に求婚されました
運命の再会
相良さんとの出会いをムダにしたくなくて、一度はしっかり和也と話をしたい、そう決めて連絡したけれど、「ウザイ」の一言で終わってしまった。

そんな簡単に付き合っていた時間を終わらされたことに、かえって悲しみなんて吹っ飛んでいった。

和也を好きになった自分ですら、腹が立つくらいだった。

「はぁ……。もっとすんなり、仕事って決まるものだと思ってたわ」

あれから季節は変わり、もう四月。

すっかり空気も温かくなり、私は心機一転、会社を転職することにした。

今までの機械メーカー事務を辞めて、新しく出直すつもりだ。

それを決めたのは、相良さんとの思い出があるから。

私のために、彼が費やしてくれた時間を意味あるものにしたくて、新たに前へ進む決心をした。

「どこも書類落ちか面接落ちなんだから。ヤバイな……。このままじゃ、地元に帰らないといけなくなりそう」

今のマンションの家賃も、仕事が決まらなければ払えなくなる。

ハローワークからの帰り道、今日はめぼしい企業も見つからず、落ち込み気味であてもなく街を歩いていた。

今日まで和也とのことがあったせいで、ellの店の前には行けないでいた。

もしかしたら、相良さんに偶然でも会えるかもしれないのに。

そんな淡い期待よりも、切ない思い出の方が勝ってしまっていた。

「なんて、社長がショップに来るわけないか」

まだお昼すぎで、とりたてて用はない。

あてもなく歩いていた足は、今まで向かなかったellのショップへ進んでいた。
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