カリスマ社長に求婚されました
なにか話さないと……、混乱する頭でやったと出てきた言葉は、やっぱり相良さんの素顔のことだった。

「あの……、相良さんって、ellの社長だったんですね。テレビで偶然見て驚きました」

おずおず言った私は、ハンカチをバッグから取り出す。

相良さんがellの社長と知ってから、ellに電話をしてみようかと思ったこともある。

だけど、もし迷惑がられたら辛いから、会社には電話しないでおいた。

「相良さん、イブの夜は本当にありがとうございました。ハンカチ、ずっと返したかったんですけど、会社に連絡するのも気が引けてずっと持ってたんです」

これでようやく返せて、相良さんと私を繋ぐものはなくなった。

もう、相良さんに会わなければいけない理由は、なにもないのだから本当にお別れだ。

「ありがとう……」

相良さんはポツリと呟くように言って受け取ると、真剣な眼差しで私を見て手を取った。

「茉奈ちゃん、少し時間をくれないか?」

「えっ?」

私の返事を待たずして、相良さんは強引に手を引っ張ると店内へ入っていった。
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