カリスマ社長に求婚されました
はっきり言い切った優一さんを見て、ウソがないことは分かる。

だけど、心がスッキリしないのはなぜだろう……。

「うん……」

頼りなげな返事をすると、優一さんは黙って左手を私の手に重ねて握った。

きっと、私の不安な気持ちを分かってくれたからだと、嬉しさが少しずつ胸が広がる。

と同時に、結局私は奈子さんにヤキモチを妬いているだけなのだと、改めて実感する。

この温かくて大きな優一さんの手を、誰にも渡したくない、そんなひとり占めしたい気持ちでいっぱいだった。

会社を出てニ十分、車は待ち合わせのスセンリプホテルに着いた。

大型ホテルで部屋数は540室ほどある。

白い外観のシンプルな建物で、玄関から入ると、天井の高い開放感溢れる景色が飛び込んできた。

正面には、数メートルの高さの椰子の木が飾られている。

呆気にとられて眺めていると、優一さんが「もう少し遅い時間になれば、ライトアップされるよ」と教えてくれた。

有名なレストランも多いからか、フロアは人の往来がそれなりにある。

初めて来た高級ホテルのスケールの大きさに戸惑いながらも、奈子さんとの待ち合わせ場所である、七十階のレストランへ向かった。
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