カリスマ社長に求婚されました
レストランはネットで見た限りでは、景色が一望できることで有名みたいだ。

店内の構造から、180度街が見下ろせると書いてあった。

そしてその言葉どおり、店に入ると前方には、夜に染まりかけたネオンの街が見えてきた。

「予約している坂下です」

三十代前半くらいの品のいい女性店員に名前を告げると、「お連れ様は、先ほどいらっしゃいました」と感じ良く告げられ、案内される。

あらかじめ奈子さんには、広報部から予約名や場所などは連絡が入っているから、早めに到着したらしい。

「茉奈、そんなに緊張しなくていいよ。今夜は、ただの仕事だ。いつもどおりに、していればいい」

と優一さんは静かに耳元で囁いて、私の背中を優しく叩いた。

「うん……」

優一さんの言うとおりで、今はまだ業務中だ。

私情を挟んで上の空なんて、絶対にしてはいけない。

気を引き締めるように小さく深呼吸をひとつして、席へ向かった。
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