恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~
「子どもたちはみんなするでしょ? あのおもちゃをください、とか、あの人形をください、とか」

 いい歳して、このおじさん、なに言ってんの。

「あのね、あたしもう高二だし、そもそもサンタなんか信じてないし」
「でも、トナカイさんだって小さい頃は信じてたでしょ?」
「そりゃ、幼稚園の頃はね。でも、小二のとき、朝起きて枕元にあったのが、スーパーで売ってたお菓子入りのブーツだったんだもん。フツー、気づくでしょ。お母さんがサンタだったんだって」

 あたしの言葉を聞いて、サンタクロースが眉を寄せた。そのせいで白い眉毛がつながって見える。

「それはトナカイさんがちゃんと信じてなかったからだよ。だから、サンタさんは来られなかったんだ」
「ちょっと、さっきからトナカイさん、トナカイさんってやめてよね」
「じゃあ、名前教えてくれるかな?」
「今日、たった一日バイトが一緒だっただけの見ず知らずのおじさんに、どうして名前を教えなくちゃいけないのよ」
「つれないなぁ。ほら、なんだっけ、この国では『袖振り合うも多生の縁』って言うじゃない」
< 4 / 16 >

この作品をシェア

pagetop