恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~
 教えてよ、とサンタクロースが言った。

 相手をするのもいい加減うざくなってきて、あたしはわざとぶっきらぼうに答える。

「沙希(さき)」
「沙希ちゃんかぁ。かわいい名前だねぇ」

 この人、もしかしてヤバイ人なんじゃないだろうか。急に怖くなってきた。

「あたし、もう帰るから」

 店の中に戻ろうとしたとき、うしろから手首を掴まれた。温かくて大きい手。

 びっくりして振り返ると、サンタクロースが真剣な目をしてあたしを見ていた。

「教えてよ」
「え?」
「沙希ちゃんの欲しいもの」
「なんであんたに教えてなきゃなんないのよ」

 手を振り払おうとしたけれど、このサンタクロース、ただの小太りのおじさんかと思ったけど、意外と力は強い。

「教えてくれなきゃ、欲しいものをあげられない」
「おじさん、頭、大丈夫? サンタクロースのコスチュームを着て、本物のサンタにでもなったつもり?」

 あたしのトゲトゲした言葉にも、彼はニコニコ笑っている。
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